題肢セットのいろいろ⑦シーンとせりふ

私の家に用事で訪ねてくるひとの中には、面白いセリフの持ち主がいる。

一人目、新聞の集金のお兄さんは私がドアを開けると、開口一番「おまたせしました!」と朗らかに言う。私のほうは集金人がくるのを首を長くして待っていたわけではないので奇妙な感覚にとらわれる。4383円の代金に1万円札を渡すと、かばんから、5枚の千円札と6枚の百円玉と1枚の10円玉と1枚の5円玉と2枚の1円玉を間違いなくだすのに少しもたもたしたあと、朗らかな破顔で、その日2度目の「おまたせしました!」を発してくる。好人物を全身であらわしたような、良い笑みである。

この一幕は、彼が集金にやってくるようになってから何年も続いている。 他の集金人で「おまたせしました!」から始まる人はいないので、これは彼固有のセリフといっていいだろう、と想像を膨らませてみると、、、、店にもどって金を確かめて額があわないのは、非常に非常に気分の悪いことにちがいない。そこで、彼は、集金の戸口に立つたびに、小声で「釣銭は絶対間違えない」と自分に言い聞かせ復唱しているに違いない。ドアを開けた時に「おまたせしました」というのは、そのプライミング効果かなぁ?。

例1: 題:ひとの家を訪問する仕事で、戸口に立ったときの最初のセリフ、どうする? 1:お待たせしました(<a href=”http://www.nikkei.com/“>日経新聞</a>) 2:ご苦労さまでございます(<a href=”http://www.watami-takushoku.co.jp/“>ワタミの宅配</a>) 3:まいどありがとうございます(<a href=”http://www.kuronekoyamato.co.jp/“>大和運輸</a>) 4:こんちは(<a href=”http://www.toukei.metro.tokyo.jp/seikei/ka07wish.htm“>東京都家計調査</a>局) 5:いい天気ですネェ(<a href=”http://www.sagawa-exp.co.jp/“>佐川急便</a>) 6:・・無言で・・(<a href=”http://www.japanpost.jp/“>日本郵政</a>)

カッコ内は我が家にきた実例だ。 脚注的な話だが、 ワタミの宅配では、惣菜を届けてもらう私のほうがいうべきセリフを、彼が自分で言うのである。雨や雪の日に苦労しながら届けてくれているのに、玄関まで受け取りに出るだけの私が「ご苦労さま」といわれるのは、やはり奇妙な感覚だ。大きな会社にでもいたかんじの、年金年齢のひとなので、そのセリフをいいなれているのかもしれない。

もうひとつ、脚注的な話だが、 エレベーターでたまたまでくわすひととの会釈や挨拶は、どうするか? これにもいろいろなセリフがあるだろう。 たとえば、アメリカ人と出くわすと、必ず、声掛けが起きる。

例2: 題:エレベータで乗り合わせたときのセリフ、どうする? 1:ハイ! 2:おはよ 3:こんちは 4:なんでもいいから、出会いがしらの居合抜きのように、相手に言われる前にいう。先に言えたら勝ち、相手に先に言われたら負け。目標は、年間勝ち越し。 5:アメリカ人ならボンジュール、フランス人にはグーテンターク、中国人にはアンニョン、韓国人にはサワディー

話は変わる。

遠くに離れてくらしている老母が、数年前に振り込め詐欺にひっかかった。警察からの電話と思いこまされて、電話相手に暗証番号を伝え、まもなくカードを取りに来た男にカードを渡してしまった。自分はニュースにあるようなだましに合うはずがないと、しっかり者を自認していたから、ショックと悔しさで、しばらくへこんでしまった。

言葉で人を誘導しようとする人は、せりふを選んで使う。電話で誘導して暗証番号を聞き出すことができる背景には、巧みにセリフを組み立てる手口があるのだろう。 「取りに入る」という言葉がヤクザや暴力団にある、と聞いた。 とにかく、「相手から金を取る・獲る」と決めたら、あらゆるセリフを動員して、必ず獲るところまで手を緩めない。そのことを、「取りに入る」というのだそうだ。 そのことを教えてくれた人は、ずいぶん昔に住んでいた公団住宅で隣に住んでいたひとだ。 彼は、娘の小学校の先生に家庭訪問で「お父さんの仕事は何ですか?」と聞かれた夜、ごまかしの返答ではなく、自分の本当の仕事は何だろうかと、自問して答えを出した。 「自分は、業として恐喝を行う、恐喝業者である」というものだったそうだ。

さぞかし人を脅かして金を奪うセリフをたくさん知っていただろう。 そのとき聞いておけば、かなり風変わりな題肢セットの実例として示せたかもしれない。それは残念ではあるが、生活安全課の方に今日の恐喝シーンで使われるセリフのいろいろを投稿してもらえると、ありがたい。市民のための防犯教育の一環にもなるでしょう。

所長 の紹介

選択肢研究所の所長です。
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