選択肢研究と選択肢教育

題肢セット⑨の最後で、選択肢教育という言葉を書いてしまった。これは、まだしばらく触れないでおくつもりだったが、すこしだけ、私の考えを書いておいてもよいかと思う。

じつは、このブログを開始して半月もたっていないが、「選択肢研究」と5文字熟語でgoogle検索すると、このブログの記事が先頭ページにたくさん出てくるようになった。「選択肢」と「研究」というふたつの語が書かれたページは無数にあるが、5文字熟語として使っているのは、あまり他にないようだ。 それでは「選択肢教育」という5文字熟語ではどうか。google検索してみると、「選択肢」と「教育」というふたつの語が使われてサイトが検索結果の先頭にくる。「選択肢教育」も、5文字熟語として使っているところは、どうやら皆無のようだ。

「選択肢研究」や「選択肢教育」という言葉が見当たらないのは、そういう言葉を使っている人がいないためだが、実際に「選択肢研究」や「選択肢教育」をしている人や組織がいないということではない。

「選択肢研究」という意味で、alternatives research という語を検索すると、日本では「東京大学政策ビジョン研究センター」というところがPolicy Alternatives Research Institute という英語名になっている。alternatives research でざっとみてみると、世界中に、政策の選択肢から動物保護の選択肢の研究まで数えきれないほどある。alternativeは、代替という語に置き換えるほうが多いから、日本ではたとえば、代替エネルギーとか代替医療といったふうな表現で、その特定テーマでの選択肢を研究している。これらは確かに選択肢を研究するものであるようだ。しかしそれらは、「選択肢」ということがら自体を研究対象としているものではない。

「選択肢教育」のほうは、実際に行われている事例があった。 中高生を対象としての「進路選択能力を向上させる教育」や「大学生の食事選択能力を向上させる」ということが検索結果に多く登場する。

その延長線上で、 「自分の行う部活を選択する能力」や 「夏休みの課題図書百冊のなかから選択する能力」 をはじめとする選択能力の向上を図る教育が行われているのではないかと想像してみるのだが、そういう実践の報告はネット上ではみつけられなかった。 ともあれ、個々の特定テーマに絞ってとはいえ、教育界は、選択能力の向上を教育の一つの目標と位置付けているようだ。これは強く支持できる。

私が「選択肢教育」として提案したいのは、もう少し立ち入っている。 たとえば、実生活で直面する前に事前にシミュレートしておくべき「場面と選択肢」は10歳までに100パターン、15歳までに200パターンとか設定して、それを生徒にシミュレートさせて学ばせるというようなことである。

題:友達が持ってるカッコいいシャーペンが欲しい、どうするか?

というような、子供の生活の中で起きうる選択場面を設定して、たとえば、

1:親に言ってすぐ買ってもらう
2:何かのお手伝いをして、褒美に買ってもらう
3:似たようなものをもってる兄ちゃんに譲ってもらう
4:持ってる友達を脅して取り上げる
5:店で万引きする

題:コンビニの雑誌コーナーで、ほとんど裸の女性の写真が表紙の雑誌が目に入った。どきどきした。気になって勉強が手につかない。どうする?
1:その本を買う
2:先生か兄さんに相談する
3:とにかく見たい
4:見てはいけないと自分にいいきかす

などの選択肢を用意して生徒にシミュレートさせるのである。 上の例での、4と5は選ぶべき選択肢として推奨できるはずのないものだが、選択肢には、最良の選択肢から最悪の選択肢まであるのは事実だ。そのようなあけすけな事実を含んだ中で選ぶシミュレーションをすることが、子供たちの選択能力をしたたかに育てることにつながるだろうと、思う。

教育は唯一の正しい真実を教えることだという立場が先に立つと、選択肢教育などはありえないしろものになる。トンデモ選択肢を含む多様な選択肢の中から最良選択肢を見つけ出す能力をつけさせることが、教育の方法論であってほしい。

トンデモ選択肢の魅力に引き付けられがちなこどもたちが、トンデモ選択肢を除外しながら最良選択肢を選ぶようになってくれるかどうか先生や親の心配はつきないが、最良選択肢にまでたどり着かせる教育指導プロセスの原理として、カント倫理学の定言命法を用いることができれば、心配は杞憂に終わるだろう。 そして、トンデモ選択肢まで考慮にいれた思考体験をしたことは、ワクチンのように、後々まで強い免疫効果を維持させるだろう。

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選択肢研究所の所長です。
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