悪の力(姜尚中)

悪の力(姜尚中 :集英社)

去年出版された本の中で、「一番良い」レベルの本である。

 

9月に発行されたときすぐに読んだ。全体として地味で、姜尚中の書き味としては、なにか疲れたような、気力が失せたような、決断がつかないような、3級の出来と思ったが、ある一点、

「≪なんでもあり≫こそ、悪の根源」

という点だけは、印象に残った。

 

これは、正しい。

 

選択肢の研究をやっていると、

問題の解としての選択肢の範囲に制限を設けることの是非について、いまだ、どの哲学も解答を出しえていないこと

に気づく。

 

つまり、問題の解は「なんでもあり」状態でありうるのであって、かつ、「なんでもあり」状態になってしまうと、それまでありそうに見えた解は、霧散費消してしまうのである。

これが、≪虚無≫ということだ。

 

虚無に陥ると、清原のようなスーパースター選手でも覚せい剤に手を出すし、宮崎のような衆議院議員も浮気の誘惑から逃れられなくなる。

 

ということならば、

自分を律していれば≪虚無≫に陥ることはない、

という人生教訓が引き出せそうだが、ことはそう短絡すべきではない。

「溺れないためには、水にはいるな。自動車事故を避けたければ、ハンドルを握るな」

というような飛躍した仮言命法は、ムチャブリすぎて、現実的ではないからだ。

 

「悪の力」の中で姜尚中も、虚無に対坐するための中心軸を示していない。ヒントになるような話も、印象薄かった。

次の本を期待しよう。

所長 の紹介

選択肢研究所の所長です。
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